mago3








 枕を持ったこの男は今なんと言った?
 同時に同じ事を思ったイヤミとチョロ松だったが、衝撃で言葉を失った長い様で短い沈黙を同時に破った。
「シェ―――――っ!」
「はぁぁぁあああああ?」
 同時に大声をあげて詰め寄る二人におそ松が初めてたじろぐ。
「チョロ松は兄弟ザンスよ? 弟ザンスよ?」
「なっなななな何言った? 今何言った?」
 驚くイヤミと動揺するチョロ松を交互に見たおそ松は、まずはイヤミを部屋の外に出すことで面倒な事を片付けようと考えた。
「弟だって知ってるよ。だから邪魔しないで」
「それはあれザンスか? 知ってるだけって事ザンスか? 理解してたら――」
「理解もしてるよ」
 背中を押して部屋からイヤミを追い出すおそ松の傍で、先ほどのイヤミのようにチョロ松がおそ松に絡む。
「ねぇ、本気? ちょっと考えて。イヤミが言ったよね? 僕弟だよ? 何で子供つくるってなるわけ?」
「覗きなんて悪趣味はしないでよね」
 動揺しているチョロ松を無視してそのままイヤミを部屋から追い出し襖がパタンとしめられた。
 襖をしめたおそ松がゆっくりとチョロ松を見る。
 にっこり笑ってはいるが、おそ松のその顔は明らかに何か企んでいる時の顔だ。
 今回の対象者は自分。
 逃げたいけど何処に逃げればいいか分からない。
 顔を引きつらせながらチョロ松が笑い返す。
 それを了承としたのかおそ松は両手で肩を掴んでチョロ松を布団の上に押し倒した。
「待って待って待って、おそ松兄さん待って!」
「待たない。いいかチョロ松、これはお前の為でもあるんだ」
 上から押さえ込み逃げられない体勢でおそ松はチョロ松を見下ろしながら言った。
「何がだよ! 弟を無理やり襲って何が僕の為だよ! しかも子供つくるとか!」
「お前オメガじゃん、子供産めるだろ?」
「産めるけど、その結論と行動結果が結びつかないよ!」
 そもそも自分がオメガだとしてもおそ松の子供をつくるという発想でなぜ自分を襲うのかがチョロ松には理解できない。
「もうお前うるさいよ。ムードも何も無いじゃないか」
 押し倒されているのにいつもふとんの上でプロレス技を掛けられている時のように騒ぐチョロ松に少し疲れたようにおそ松は言いながらもしっかり手はチョロ松のズボンを脱がそうと動く。
「だから何で――」
 子供をつくろうとするの! と叫ぼうとしてチョロ松ははたと言葉を止めた。
 これは悪戯だ。
 悪戯に関しては手を抜かない兄は小さい頃からしっかりと見てきた。
 これは後でからかわれる。
 ずっとネタにされる。
 それを回避する方法はただひとつ。
「おそ松兄さん、俺、初めてなんだけどその事意識してくれてる?」
「もちろん。俺も初めてだし」
 抵抗することばかりだったチョロ松が初めて前向きな事を話した事におそ松は機嫌よく答えた。
「しかも子供産めるけど男だし」
「もちろんもちろん、お前の裸は風呂でばっちり見てる。間違うはずが無い」
「……男とするの抵抗無いの?」
 自分が子作りに乗り気になれば反対に引くと思っていた兄が引くどころかうきうきし始めるのにチョロ松は何か選択を間違っただろうかと内心焦った。
「男とするのは嫌だけどチョロ松と子作りするのはがんばる」
 自信満々に言い切るおそ松に、チョロ松は眩暈がしてきた。
 兄は本気だ。
 本気でヤろうとしている。
 これは逃げられない。かもしれない。
 童貞より先にオメガとして処女を卒業するなんて考えても見なかった。
 チョロ松がヒロインのように黄昏ている間におそ松は同意も得たとうきうきとチョロ松の下半身から全てを剥ぎ取った。
 人間とは不思議なものだとチョロ松は思った。普段なら見られても平気なはずなのにこんな状況で見られるととても気恥ずかしくなる。
 自分の下肢を脱がせて自身もズボンを脱ぎ捨てるおそ松を前にチョロ松は恥ずかしさでもぞもぞと膝頭を擦り合わせた。
 しかしおそ松はそんなチョロ松の恥じらいなど無用だとばかりに足を持って大きく股を開かせた。
「うぁぁあっ!」
 色気の無い声を上げるチョロ松にかまわず、おそ松は準備していたらしいジェルをポケットから取り出しそこで初めてチョロ松に問いかけた。
「後ろからがいい? それとも顔見てやりたい派?」
 自分と同じ造形の顔を見ながらか否か。
 消去法しか無い選択肢にチョロ松がさらに黄昏ていると焦れたのかおそ松は面倒だとばかりに仰臥したチョロ松の股間に手にしたジェルを振りかけた。
「冷たっ! ちょっと何すんの!」
「痛くないように優しい心遣いだよ。ほんといいおにいちゃんだよね俺って」
 自我自賛しながらジェルの瓶を放り投げるとそのままチョロ松のアナルに指を突き入れた。
「ひぃっ! いったいっ! 痛いっ!」
 いくら潤滑剤としてジェルを使っていても本来入れる場所ではないところに指を挿入しているのだ。摩擦の痛みは軽減出来ても、拡げられる痛みには効果は無い。
「うっわきつい! チョロ松少し緩めないとこんな狭いところ俺つっこめないよ」
 括約筋で締まっているところを無理やり拡げる抵抗感におそ松が指一本を入れたがそれ以上の事が出来ずせめてもと指を中で動かす。
「ちょっちょっと中で動かさない……でっ! ひゃあ」
 指を挿入したとたん苦しそうに体を硬直させていたチョロ松だったが、闇雲に動かしていたおそ松の指がある一点を圧した途端にピクンと跳ねた。
「お! ここ? ここイイの?」
 その変化を見逃さずおそ松が反応したあたりを探るように執拗に撫で回す。
「やっやめてってばっ!」
 チョロ松は抵抗するように足を動かしたが、すでにアナルに指を挿入されているという状況での抵抗は意味が無い。
「指を抜いっひぁっん!」
「あ、ここね。ここがチョロ松のイイところなんだ」
 あっけなくイイところを探し当てられて、再度声を上げてしまい、おそ松はにんまり笑いながら更にぐりぐりとイイところと言った内壁をぐりぐりと揉み圧してくる。
「ひっやっぁあ、そこ、駄目っ!」
 硬直していたチョロ松の体が指一本で面白いように声を上げて反応する。
 その事におそ松の中の雄としての征服欲が刺激される。
「駄目って言うわりになんかイイ声上げてない? あ、ツンデレって奴? 反対の事言っちゃう系?」
 おそ松は楽しくなって言葉で煽りながら更に指でチョロ松の内壁をグリグリと指圧で揉み解すかのように刺激する。
「ほん、とに、ぁ、やめっ……て……ぇ」
 言葉で拒否はするがおそ松の指を締め付けていたくらい硬直していたチョロ松の体は、次第に弛緩し始めた。
 アナルは緩み簡単に指が抜き差し出来る。
 前は中から刺激されて当然のように勃ち上がり始めていて、先端からすでに漏らし始めていた。
「チョロ松ぅ〜、勃ってきてるじゃん。嘘言わないのー、ここも指増やせそうだし」
「って、指増やすなぁ、ああっ」
 ぐっと最初の指を挿入した時のように指を増やしてぐっとアナルを押し開くように挿入する。
「あ、なんかもう一本いけちゃう?」
 一本目を挿入した時とは違い、激しい抵抗感もなく挿入出来た指はきつさも感じない。
「いけな、い、からっ!」
 アナルを指で広げられる感触は今まで体験した事のない感覚をチョロ松に伝えてきていた。
 おそ松の指が体の中で不快に蠢くだけだったのにある一点を抉るように刺激されてから体から力が抜け始めた。
 辛くて痛かった指で広げられたアナルは痛みよりも何かむず痒さが沸きおこり、もっと弄って欲しいとさえ思えてくる。
 お尻は気持ちいいのかもしれない。
 不意に頭の中に浮かんだ言葉をチョロ松は否定したくて首を左右に振る。
「じゃあ、増やさないで拡げちゃおう」
 チョロ松が首を左右に振った仕草を「無理、入らない」の必死の訴えと思ったのかおそ松はチョロ松の中に差し入れている指を左右に開いた。
「んんん、んっ」
 やっぱり痛いとは思えず変な声が漏れそうになり、チョロ松は必死で声をかみ殺す。
 その姿におそ松の雄が物理的に反応してしまった。
どう見ても自分の指ひとつで感じているのに必死で否定するチョロ松はいつものネガティブに兄弟に反論する姿と変わらないとおそ松は思う。
思うのになぜかその姿に反応した挙句、早く突っ込みたいとも思う。
抵抗感が微塵もない事にまったく気づかず、おそ松は自分の欲望を第一に行動に移した。
「チョロ松、ちょっと我慢できないから、このまま突っ込む」
「は? 何言って、んっひぃっぁあ」
 アナルを更に広げるように指を開いたまま引き抜かれて、チョロ松がその感覚に声が漏れるのを耐えようとしたところにおそ松のモノが強引に押し入ってくる。
「はは、なんか、きついけど、チョロ松の中、気持ちいいかも」
 先端をねじ込んだ後は内壁に包まれる気持ちよさにおそ松は何度も突きあげるようにして結合を深くしていく。
「ああ、ちょっ、そんな奥っ突っ込む、なっぁっ」
「むしろ突っ込まなくてどうする!」
「んあっあああ、馬鹿兄っ」
 突き上げられるたびにチョロ松が色気のない罵声を上げるがそれよりもおそ松の中では雄としての気持ちよさが勝り、まったく気にならない。
 罵声も腰を突き上げれば何か意味不明な言葉に変わるため、おそ松としては一石二鳥で夢中で腰を振った。
「チョロ松ぅ、俺、もう、そろそろ、イきそう」
「そ、んな、申告、いら、ないっあっそこっ駄目」
 何度目か分からないくらいペニスを内壁で擦り上げていると急にチョロ松の中が収縮しておそ松を絞り上げた。
「あっチョロ松っ! イく!」
 その刺激に堪らずおそ松が射精する。
 射精を終えて放心しながらおそ松がチョロ松を見るとチョロ松も放心していた。
「……馬鹿兄、すげー眠いんだけど。責任取れよ」
 チョロ松はトロンとした視線を向けておそ松に言うとそのまま目を閉じた。
「え? チョロ松?」
 まだ突っ込んだままなんだけど?
 言おうとして自分達の状態に意識を向けたおそ松は下腹部の濡れた不快感に気がついた。
まさか出血?
初めてって出血するよね?
でもこんなに血が出るものんなの?
ああ、こいつオメガの男だった。
だからこんなに出血したの?
それで出血しすぎで意識なくなったとか?
様々な雑誌などで培った初めての女性と事を成す為の知識を呼び起こし、さらに相手がチョロ松だった相違点を考えておそ松は蒼白になって恐る恐るチョロ松と繋がっている下半身を見た。
「赤く、ない?」
 自分に不快感を与えている濡れた感触は赤くなく白濁としていてどう見ても自分で処理するときによく見る液体だ。
「え? え?」
 自分はチョロ松の中に出した。
 外には出していない。
 二人の腹を汚せるのは……。
 おそ松が自分の行き着いた考えを確認するように二人に挟まれているチョロ松のペニスの先端を凝視する。
 銭湯で隠す事はないがここまで弟達のモノを凝視する事もない。
 変な気分でじっと見つめれば、先端から滲む液体に下腹部を塗らしたのはチョロ松のものだと分かる。
「えええぇぇぇええええー!?」
 お尻に突っ込まれて射精?
自分が気持ちよければそれでいいという相手の事を考えていないクズな思考あからさまなおそ松の頭の中に突き付けられたチョロ松の現状は予想外すぎた。
「お、俺に突っ込まれて、チョロ松は気持ちいい?」
 当初の目的をすっかり忘れてあたふたするおそ松に目を閉じて脱力していたはずのチョロ松の手が伸びる。
「いつまで突っ込んでるつもりだよ」
 胸倉を掴み睨むチョロ松に動揺したままのおそ松はこれ以上驚く事はなく反対に動揺していないチョロ松こそおかしいとばかりに問いかける。
「そんなことよりチョロ松、お前、俺に突っ込まれてイっちゃってるよ? 俺の気持ちよかったの? あ、今意識した? なんかきゅっって締まった」
 繋がったままの言葉の応酬は明らかにチョロ松には不利だった。
「そ、それは生理現象じゃボケっ! 前立腺弄られたら誰だってイくわっ! ってか何また反応してるんじゃっ! 早く抜――」
「チョロ松が締め付けるから、またムラムラしてきた」
 言いながらおそ松が胸倉を掴まれたまま腰を動かしはじめる。
「ちょっとっ! なにまたヤろうとしてっんんっ」
 脱力した後も繋がったまま何やらもぞもぞとしていたおそ松にイラついて抜くように強要しようしたはずがまた盛られてしまった。
 しかもさっきより身体が反応してしまっている。
「ああ、さっきより中の動きが、気持ちいいよチョロ松、あ、すぐにイきそ」
 楽しそうに言いながら腰を突きあげてくるおそ松の動きは当然チョロ松にも堪らない刺激を与えてくる。
 内壁が刺激される感覚は最初こそ辛いが擦られ続けるとその刺激が堪らなくなってくる。
 だが、おそ松ほどに欲望に従順になりきれていないチョロ松にとってはこの気持ちよさよりも早くおそ松とヤっている事実が頭からはなれない。
「イくなら、早くイって」
「んんっ もうっちょっと」
 チョロ松の葛藤をよそにおそ松が更に腰を揺らして中で果てると満足そうにおそ松はチョロ松からはなれた。
 一人用の狭い布団の中でおそ松はチョロ松の隣にごろりと横になった。
 お互い下半身のみ露出した姿だが、体を襲う疲労と脱力感でそんな事は気にならない。
疲れは同じように感じていたが、表情はひとりは達成感を一人はショックと絶望感という別々の表情を浮かべ二人はそのまま眠りについていく。
部屋の外ではイヤミが騒いでいたが二人を誘う睡魔には不可抗力だった。





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