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 離婚騒動も落ち着き、6人に弟か妹が出来る勢いでラブラブになった両親におそ松はテレビを見ながら傍にいるトド松に呟いた。
「なあトド松、やっぱり孫は最強だよな」
「なぁに改めて言ってるの? おそ松兄さんもあの時言ってたじゃない」
 ちゃぶ台にひじを突きだらしなく頬杖を突いたトド松は自分とテレビの間に横になっているおそ松のつむじを見た。
「だよなぁ」
 おそ松がトド松の言葉に頷きながら見ているテレビ画面には先ほどから小さな子供が年若い父親と映っている。
 しばらく無言で見ているとおそ松がまたぼそりと呟いた。
「チョロ松の孫保証ってさ、あいつが産むの? 産ませるの?」
「は?」
 トド松が何を言っているのかと口をあけておそ松を見ると同時におそ松はすばやくトド松に向かって正座して顔を寄せてきた。
「だってさ、あいつオメガだぜ? 子供産めるじゃん! と言う事はあいつの孫保証の相手になれば俺も孫保証息子になれるじゃん!」
「はぁぁぁぁあああ!?」
 女の子とデートするのが大好きな自分にはありえないおそ松の発想にトド松が驚いて大声をあげた。
「声大きいトド松」
 耳を塞いで侮蔑のまなざしを向けながらおそ松は声を潜めて続けた。
「お前も言ってただろ、あいつは女の子が絡むとポンコツになるって。絶対産ませられない」
 断言するおそ松にトド松も反論は出来ない。
「確かにチョロ松兄さんは女の子が係るとポンコツになるよね」
「だろだろ? これは兄としてあいつを嘘つきにさせないように協力してやる義務がある」
 鼻息荒く力説するおそ松をトド松は胡乱な者を見る目つきで見た。
 明らかに、絶対に、扶養確約が欲しいだけだ。
 同じく扶養合格者となったものだからわかるおそ松の下心にトド松は軽蔑もあるが少しだけ共感もする。
今後もいつ両親が離婚すると騒ぐかわからないのだ。
二人の孫と言う言葉への食いつき具合からするとこのゴールデンカードを持っていれば絶対に見捨てられる事はない。
だからこそ、競争相手である兄二人がそのゴールデンカードを手にする事に賛成なぞするわけがない。
「でもさ、チョロ松兄さんはオメガだけど、僕達アルファじゃ無いじゃん。ベータとオメガって妊娠しにくいんじゃないの?」
 けん制の意味をこめて言ったトド松だったか、おそ松はそんな事に気づくはずも無くまるでカラ松がポーズを決めた時のように笑い親指を突き出した。
「それは兄弟の相性で乗り切って見せるさ。それに俺達はオメガじゃないがベータと決まったわけじゃない。アルファかもしれないぜ」
 トド松はそもそもアルファなら今自宅でテレビなんて見ていないよと言う突っ込みを飲み込んだ。
「そうと決まれば、チョロ松に同意を取らないとな」
 何が決まったのかもわからないが、チョロ松の同意は取ると強引なのかそうじゃないのかわからない決意をしたおそ松は突っ込みも忘れたトド松を部屋に残して出て行った。





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